2008年に調査を開始したGPCIは今年で10周年を迎えました。これまで、ニューヨークからロンドンへの首位交代(GPCI-2012)、東京がパリを抜いて3位にランクアップ(GPCI-2016)など、上位都市の順位入れ替わりがありました。
現在はロンドンが首位を独走していますが、2019年3月の英国のEU離脱、2020年の東京五輪、2024年のパリ五輪などが都市力に大きな影響を与えると予想されます。
今後、都市間競争はどのように変化していくのでしょうか。
10周年特集のPDFファイル
世界の都市総合力ランキングの詳細な調査結果は、概要版およびYEARBOOKをご覧ください。概要版は、下記よりPDFのダウンロードが可能です。YEARBOOKは、GPCIの調査方法、データ・ソース一覧、各都市のスコア・順位の分析などを掲載しています。
MESSAGES FROM THE COMMITTEE
2008年に初めて発表したGPCIは、今年で10周年を迎えました。10年前を振り返ると、2007年の米国サブプライムローン問題に端を発した世界的な金融危機が世界の多くの都市に影響を与えたことで、GPCI開始以来、数年間に渡ってロンドンやニューヨークなどの上位都市の多くが都市力を落とし続ける結果となりました。
その後、金融危機前の水準にまでスコアが回復していない都市がある一方で、着実に都市力を伸ばしてきた都市があります。それが、6年連続で1位となったロンドンです。五輪開催年の2012年にニューヨークを抜いて世界1位へと躍進したロンドンは、五輪以降もスコアを伸ばし続け、2位以下とのスコア差を年々拡大し続けています。
東京がロンドンを抜いて世界1位の都市になるためには、ロンドンよりも高い成長力を中長期的に維持していく必要があります。そのためには、既成概念にとらわれず、官民が連携してイノベーションを起こすための規制改革を積極的かつ持続的に行っていくことが求められます。東京五輪という国家イベントを改革のアクセラレーターとし、東京にビジブル(可視的)な変化を起こしていくことが期待されます。
竹中 平蔵
東洋大学教授
慶應義塾大学名誉教授
森記念財団都市戦略研究所所長
GPCIの10年間の変遷をスコアで見てみると、世界の各都市がグローバルなコンテクストの中で、その都市力を相対的に変化させてきたことが読み取れます。スコア変動の最大の要因は経済分野であり、時にはマクロ経済情勢の影響によりスコアを落とすこともありますが、それ以外にも、居住や環境、交通・アクセスなど、各都市が抱える個別の課題をクリアすることで、各分野のスコアを向上させてきた都市もあります。
東京に関して過去10年間を振り返ると、トップ2都市と比べてやや弱かった交通・アクセスや文化・交流の分野で評価を高めてきた結果、2016年にパリを抜いて3位になり、今年も総合スコアを更に伸ばしたことで、2位ニューヨークとの差を縮めることができました。過去6年間1位を維持してきた経済に関しては、GPCI-2017で4位まで順位を落としたものの、全分野において高いスコアを得たことで、バランスの取れた都市となってきています。
今後、世界の各都市が相対的な力関係の中で、都市の磁力を高めていくためには、各都市が持つ魅力や課題を理解すると同時に、ベンチマークとしているライバル都市の動向も捕捉しておくことが必須です。そのための総合的な都市評価指標がGPCIであり、今後、さらに多くの人々によって都市政策や企業戦略の立案に役立てられることを期待します。
市川 宏雄
明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科長・教授
森記念財団 理事
COMMENTS FROM MAYORS
ロンドンは世界で最もビジネスに適した都市です。
才能に満ち溢れた人材の集積、ありとあらゆる部門にわたる膨大な数のグローバル企業の存在、そして行政機関やビジネス支援サービス、重要な欧州市場へのアクセスを擁するロンドンは、世界で最もビジネスに適した都市です。
さらに、ロンドンの文化的魅力や食事の魅力、そして数多くのスポーツイベントは世界トップレベルですが、これですら、人々が暮らし、働く場所としてロンドンが魅力的といわれる理由のほんの一部にすぎないのです。
サディク・カーン
ロンドン市長
セーフ シティ、ダイバーシティ、スマート シティの3つのシティの実現
「Old Meets New」。3年後の2020年オリンピック・パラリンピックの舞台となる東京は、「伝統」と「革新」が共存する多彩な魅力を持つ都市です。四季折々の自然と近代的な風景が融合する街には、人材、情報、技術、文化が集まり、交流し、日々活力を産み出しています。また、きれいな水と空気、高い治安と正確な交通網、人々の礼儀正しさなども、世界に誇る東京の強みです。
こうした東京の力を磨き上げながら、一方で、少子高齢、人口減少、災害対策、地球温暖化といった直面する諸課題を克服するため、我々は今、「東京大改革」を進めています。より安心で、安全な都市「セーフ シティ」、誰もがいきいきと活躍できる都市「ダイバーシティ」、そして、世界に開かれた、環境・金融先進都市「スマート シティ」、目指すは、この3つのシティの実現です。
2020年のその先を見据え、日本の首都東京を、あらゆる分野で持続可能な「新しい東京」へと再構築してまいります。
小池 百合子
東京都知事
人々が散歩したくなる快適さを備えた、働きやすく、暮らしやすいグローバル都市
ソウルは、才能豊かな人々、二千年の歴史、そして美しい自然に恵まれた都市です。ソウルの強みのひとつは、高度な情報技術とゆたかな文化的コンテンツです。また、変化に迅速に適応し、革新的な都市モデルを創造する力も、ソウルならではの強みと言えます。この活力により、ソウルは経済の繁栄と生活の質の向上を達成することができたのです。過去10年間で、ひとりあたりの域内総生産(GRDP)が1.5倍に、従業員数は120万人も増加しています。また、2016年にはアルカディス社「持続可能都市インデックス」の「人々の生活の質」分野で1位に輝きました。
しかし、私たちはここで満足することはありません。ソウルが目指すのは、人々が散歩したくなる快適さを備えた、働きやすく、暮らしやすいグローバル都市です。しかし、人々がソウル市民であることを誇りに思い、より多くの観光客を海外から惹きつける都市になるためには、いくつかの課題があると認識しています。そのため、若者や高齢者の雇用創出、研究開発クラスターの確立、観光・MICE・エンターテイメント産業の発展、環境に優しい交通の整備、そして都市再生によるバランスのとれた成長に向けた施策を推進していきます。
朴 元淳(パク・ウォンスン)
ソウル市長
すべての人々にとって魅力的な、住みやすいグローバル拠点であり続ける
今日の世界経済は、都市を中心に動いており、アムステルダムを含むこれらのグローバル拠点は、国際的なイベントや優秀な人材、急成長する多国籍企業を引きつける磁力を持っています。さらに、イノベーション、ナレッジ、そしてスタートアップ企業の育成の場としても機能しています。
アムステルダムが他の都市と違う点は、国際的な都市でありながらも、コンパクトで住みやすく、小さな村のような魅力にあふれていることです。市民や企業が繁栄し続けるためには、この環境を維持し、さらに発展させてゆくことが重要です。そのため、アムステルダムとその周辺地域では、インフラ、インターナショナルスクール、オフィスと住宅市場にさらなる投資をするという意欲的な計画を推し進めています。私たちはこれからも、すべての人々にとって魅力的な、住みやすいグローバル拠点であり続けます。
エバハート ファン・デル・ラーン
アムステルダム市長 ※2017年9月時点
ウィーンをこれまで以上に革新が花開く都市とする
ウィーンの最大の強みは、異なる地域や企業におけるアクターを統合させる、その包括的で分野横断的な取り組み姿勢です。持続的、革新的、そして社会的な側面を結びつけることで、質の高い生活を保証し維持し続けることを目指しています。
ウィーンではすでに、この目標の達成に向けて多くのプロジェクトに取り組んでいます。具体的な事例としては、市が所有するエネルギー供給会社、ウィーン・エネルギーが運営する「市民の太陽光発電所」が挙げられます。もうひとつの例は、8,500戸、2万人が居住予定の「アスペルン – ウィーンの湖畔都市」です。およそ240ヘクタールにおよぶこの“都市の中の都市”を作るプロジェクトは、ヨーロッパ最大の都市開発のひとつとなります。
今後、ウィーンは資源の消費を大幅に削減すると同時に、すべての市民にゆたかな生活と社会的なつながりを提供し続けます。積極的に変化を起こし、ウィーンをこれまで以上に革新が花開く都市とするために、これらの課題に取り組んでまいります。
ミヒャエル・ホイプル
ウィーン市長