「世界の都市総合力ランキング」(Global Power City Index, GPCI)は、地球規模で展開される都市間競争下において、より魅力的でクリエイティブな人々や企業を世界中から惹きつける、いわば都市の“磁力”こそが「都市の総合力」であるとの観点に立ち、世界の主要都市の総合力を評価し、順位付けしたものである。世界を代表する主要42都市を選定し、都市の力を表す6分野(「経済」「研究・開発」「文化・交流」「居住」「環境」「交通・アクセス」)における70の指標に基づいて評価を行った。
世界の都市総合力ランキングの詳細な調査結果は、概要版およびYEARBOOKをご覧ください。概要版は、下記よりPDFのダウンロードが可能です。YEARBOOKは、GPCIの調査方法、データ・ソース一覧、各都市のスコア・順位の分析などを掲載しています。
MESSAGES FROM THE COMMITTEE
2008年に「世界の都市総合力ランキング(GPCI)」を発表して以降、4位を維持し続けてきた東京が遂に3位となった。これは、明らかに良いシグナルである。今回の結果は、国家戦略特区などによる種々の改革の効果が出てきたと言える一方で、アベノミクスを背景としたマクロ経済効果(円安など)の影響に依るところも大きい。世界3位という結果を決定的なものとし、東京オリンピックに向けて更なる高みを目指していくためには、今以上の規制改革が求められる。東京都における28の国家戦略特区プロジェクトをはじめとした民間主導の好循環へと繋げていくための東京の挑戦は、今まさに始まったばかりである。
竹中 平蔵
東洋大学教授
慶應義塾大学名誉教授
森記念財団都市戦略研究所所長
森記念財団都市戦略研究所が2008年に「世界の都市総合力ランキング(GPCI)」を発表してから今年で9年目になる。トップ4都市の顔ぶれは2008年以降変わっていないが、今年は東京が遂にパリを抜き3位となった。2020年の東京オリンピック・パラリンピックが開催されることで世界からの注目を浴びるとともに、東京の都心での再開発が加速している。虎ノ門を初めとして、品川、渋谷、さらには東京駅周辺で今後、一層の大規模プロジェクトが次々と竣工を迎える。さらに、インバウンド施策の取り組み、国際空港の発着枠拡大等の政策の推進により、今後、都市力の一層の向上につながると予想される。ロンドンは依然として首位を独走しているものの、イギリスのEU離脱問題(Brexit)が今後、ロンドンの都市力にどのような影響を及ぼすのかが不明である。東京は弱みを克服する政策を実施することで、トップを狙えるところまで来ている。
市川 宏雄
明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科長・教授
森記念財団 理事
COMMENTS FROM URBAN EXPERTS
この研究は、EU離脱するという最近の国民投票の結果にも関わらず、ロンドンがビジネスを行うために世界で最も優れた場所であることを示している。ロンドンは、すべての業種やセクターにおいて、スタートアップ企業からグローバル企業にいたるあらゆるビジネスが繁栄するための理想的な環境を提供している。私は、英国がEUを離れても企業のニーズが満たされ、我々の偉大な都市がそのグローバルな地位を維持できるよう、ロンドンの産業界とともに力を尽くしている。
サディク・カーン
ロンドン市長
このランキングでは、東京が総合力において世界有数の都市であることが示されています。技術や知の集積、きれいな水や空気、世界に誇る治安など、多彩な魅力を読み取ることができます。一方で、東京には、少子高齢、人口減少、災害対策、地球温暖化といった、今後の都市のあり方を左右する重要な問題も存在します。
私は、強みを伸ばしつつ課題を克服し、東京のさらなる進化を目指します。より安心で、安全な都市「セーフ シティ」、誰もがいきいきと活躍できる都市「ダイバーシティ」、そして、世界に開かれた、環境・金融先進都市「スマート シティ」、目指すは、この3つのシティの実現です。
そして、2020年オリンピック・パラリンピック、さらにはその先も見据え、東京を持続的に発展させることで、日本の未来を明るく照らしてまいります。
小池 百合子
東京都知事
ソウルは世界に類を見ないほど多様性にあふれ、魅力的でダイナミックな都市である。ソウルは2000年の歴史と現代性をバランスよく兼ね備えている都市である。高度な人的資源と最先端のテクノロジーは他の都市に劣らない。過去5年間、世界に対してソウルの良い面や美しさのプロモーションに尽力してきたと同時に、より住みやすい都市にするための努力を重ねてきた。世界的に認知されている都市インデックスであるGPCIにおいて、ソウルが6位を維持しているという事実は、私のこれまでの努力を証明していると言える。ソウル市民がソウルは住みやすい都市であるということに気付いた時、ソウルは世界中から訪問者を惹きつけることになるだろう。特に、GPCT-2016の「居住」に関する評価が大幅に向上したことは、ソウルの「市民」を優先する雇用や住宅、安全といった政策が効果を発揮したことを如実に表している。ソウルは革新や改変の歩みを止めることはない。改善に向けての歩みを進めるにあたり、GPCIから見えてきたことは政策を検討するにあたっての案内星かつ貴重な参考資料となる。
朴 元淳(パク・ウォンスン)
ソウル市長
アムステルダムはグローバルなビジネスハブとしてますます成長を続けており、それは、アムステルダムが有する都市としての特徴にうまく適合している。アムステルダムの人々が寛容で、多くの言語を話せることはよく知られており、その結果、アムステルダム都市圏には180を超える国籍の人々が居住している。
私たちは、都市を働きやすく、住みやすく、愛されやすくし続けるために何が必要なのかということを理解している。それは、質の高い教育システムや効率的な都市基盤、信頼性があり協力的な政府と、技術革新への注力である。また、1500もの橋をもつ100キロメートルにわたる運河や、100の博物館、30の公園は、アムステルダムを住み、働き、遊ぶ場所として魅力的にしている。それらこそが、多くの国際的な企業やスタートアップ企業が年々増加している理由である。
アムステルダムは、着実に増加している国際的な住民を迎え入れるために、住宅やインターナショナルスクールの整備にしっかりと取り組んでいる。現在のアムステルダムにとって最大の課題は、住み、働くために最も魅力的な都市であるここと、訪れるために魅力的な都市であることのバランスをとることである。
私たちは、森記念財団都市戦略研究所が、世界の都市開発に関する調査の先頭に立ち、知識の提供を通じて各都市の都市問題の解決の手助けをしてくれていることを高く評価している。
エバハート ファン・デル・ラーン
アムステルダム市長
経営者として世界の様々な都市を訪問し仕事をしてきた経験を通じて言えることは、日本は安全性や清潔さ、ホスピタリティや教育水準の高さなど、世界に誇るべき有形無形の資産を多く有しており、東京はその宝庫である。
一方で、世界に対する発信力は残念ながら弱く、世界から見た時の存在感が薄いことや、グローバルに活躍できる人材が少ないということもまた厳然たる事実である。
東京が都市力の更なる向上を図るために必要なことは、世界に対してもっとオープンな都市になり、世界との接点を増やすことだ。異文化を積極的に取り入れイノベーションを誘発し、そこで生まれた新たな魅力をグローバルな視点で積極的に発信していくことが重要であろう。
世界から変革の圧力が加わるのを待つのではなく、自らマインドセットを変革し、そして自ら動く。それこそが東京の未来にとって今必要なアクションである。
鳥居 正男
ノバルティスホールディングジャパン株式会社 代表取締役社長
ニューヨーク市がGPCIにおいて一貫して高い地位にあることは、いくつかの要因によるものである。活気に満ちた文化的生活、強固な経済セクター、特に技術分野で顕著な研究・開発に対する尽力、テロリズムに対する相対的な安全性、そしてすぐれた居住性は、世界の主要都市を牽引するものである。新たな地で開館したばかりのホイットニー美術館、近代美術館(MoMA)の拡張、そして市内のその他の主要な美術館における取り組みによって、ニューヨークは芸術分野における世界の主要な中心地のひとつであり続けるだろう。国際的に著名な建築家によって設計された大規模な住宅建設計画や、マンハッタン東側のハドソン・ヤーズにおける開発によって、今後、市内の住宅供給量は大きく増加することが見込まれており、ニューヨークの生活の質はさらに高まることになるだろう。
グレン・D・ロウリー
近代美術館(MoMA)館長