森記念財団は、よりよい都市形成の為に、我が国の社会・経済・文化の変化に対応し、時代に即した都市づくり・まちづくりに関する調査研究及び普及啓発を主体とした公益的な事業活動を展開し、公共の福祉に寄与する活動を行っています。
東京をはじめとする日本の大都市は、世界の大都市の中でもいち早く成熟期を迎えており、大きな転換点に立っています。成長期の都市づくりはデベロップメント(開発)を中心としたものでしたが、成熟期にはデベロップメントと並んで、マネジメント(運営・管理)が重視されてくると考えます。また成長期には官のコントロールによる都市づくりが中心となっておりましたが、成熟期には官民のパートナーシップによる都市づくりを進める必要があると考えます。そのような転換点に立って、あらためて国際競争力強化に向けて必要な都市のあり方を考えることが必要です。
成熟期の都市づくりの課題は、人口減少社会、超高齢社会への対応、空き家、空き地の増大に伴う市街地縮減などの都市の変容への対応、都市インフラの老朽化や社会ニーズの変化への対応が求められています。またこれからも各種の災害に見舞われる可能性がある日本においては、大都市がBCP体制を十分整えていることを、国内はもとより、世界に向けて示していかなければならないと考えます。
一方、成熟期の都市の魅力は多様性にあります。「進化の宝石箱」とも言われ、先進性を実現する多様性は、それぞれの地域の固有の文化に根差した多様性と世界各地からもたらされた多様な文化の存在による多様性があり、ローカル化とグローバル化が交差する都市の豊かな資源であります。
またグローバル化の動向の中でも、21世紀が「アジアの世紀」であることに注視しなければなりません。今後、アジアにおける東京をはじめとする日本の大都市の目指すべき方向性と役割の明確化、そのためにとるべき行動を吟味してアジアをはじめとして世界に情報発信する必要があると考えます。なかでも今後の情報発信の重要な内容として、地球環境・エネルギー問題があると考えられ、建物レベルを超えて、エリア、都市等の各レベルでハードとソフト両面での対応が急がれてくると考えます。
本財団設立時より一貫して、時代に即した都市づくり・まちづくりに関する調査研究及び普及啓発活動を続けてまいりましたが、これからも、上記の諸側面を十分に考慮しつつ、日本の大都市が将来にわたって持続可能性の高い都市社会を構築し、他に類を見ない魅力的な都市空間を実現する方途を見出すための構想、戦略を、地についた研究、調査をもとに見出したいと考えます。それら研究、調査の成果は、刊行物として情報提供するとともに、当ホームページでも積極的に提供していきたいと考えております。是非、多くの方にご覧いただき、皆様の諸活動に役立てて頂ければ幸いです。
青山 佾
明治大学公共政策大学院 特任教授
安西 祐一郎
公益財団法人東京財団政策研究所 所長
独立行政法人日本学術振興会 顧問
尾島 俊雄
早稲田大学 名誉教授
後藤 春彦
早稲田大学 理工学術院 教授
中井 検裕
東京工業大学 環境・社会理工学院
建築学系 教授
森 浩生
森ビル株式会社 取締役副社長執行役員
専務理事
里見 晋
業務担当理事
市川 宏雄
明治大学 名誉教授
帝京大学 特任教授
理事
岸井 隆幸
一般財団法人計量計画研究所 代表理事
理事
進士 五十八
東京農業大学名誉教授・元学長
福井県立大学名誉教授・元学長
理事
辻 慎吾
森ビル株式会社 代表取締役社長
理事
村木 美貴
千葉大学大学院 工学研究院
建築・都市科学専攻 教授
監事
竹内 直文
公益社団法人 街づくり区画整理協会
理事長
監事
松河 教夫
森ビル株式会社 顧問
都市整備研究所は財団の設立時から研究組織の中心となって、市街地の実態をハード・ソフト両面から把握する基礎調査・分析、市街地を良好に維持・整備するための制度・手法の開発、さらに良好な市街地整備、都市整備を実現するための構想・戦略などについて研究を重ね、成果がまとまった段階で報告書のまとめを行い情報発信してきました。
さて、日本の大都市は、成長期の都市づくりから成熟期の都市づくりに転換しており、ディべロップメント中心からマネジメントにも重心をおいた都市づくりへと移行することが必要になっていると考えます。これまでの調査・分析、あるいは制度・手法では、これからの市街地整備、都市整備への対応が十分ではない時代になったと考えます。なかでも新しい市街地整備、都市整備の制度・手法の検討は喫緊の課題と考えます。
また、成熟期の都市ではソフトな内容である居住者、就業者、海外からなども含めた来訪者、都市産業などの面で従来とは異なる様相を示すと考えられますし、ハードな内容も従来とは異なる社会インフラのニーズやこれまで設置されたインフラへの新たな対応が求められていると考えます。それらの諸変化に積極的に対応する研究所として、財団内外の知恵を動員して研究活動を進めていきたいと考えます。
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森記念財団都市戦略研究所は、都市工学の枠組みを超え、社会、経済なども含めた幅広い分野を対象として、また、国内だけではなくグローバルな視点からの“都市戦略研究”に取り組んでいます。
2008年の設立当初からの取り組みである「世界の都市総合力ランキングGlobal Power City Index (GPCI)」を研究活動の基礎として、そこから都市分野における政策課題の抽出を行っています。また都市総合力の分析に続いて、都心レベルでの分析、都市圏レベルでの分析にも研究領域のウイングを広げています。さらに、「シナリオプランニングによる都市の未来戦略」等、東京をはじめとした世界都市の将来像や都市戦略・都市政策についても研究し、政策シンクタンクとして政府や民間からの研究を受託するなど幅広い活動を展開しています。
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急速なグローバル化の進展にともない都市を取り巻く環境は現在、大きな変革期にあります。都市戦略研究所では世界各国の都市を対象として、環境・社会・政治・経済・国際関係など様々な角度から都市の現状や将来に関する調査分析を行い、地球規模で展開される都市間競争時代において将来にわたって世界の都市が持続的に発展していくためにはどのような戦略を展開すべきなのかを探求し、関係各方面に提言を行っています。特に、グローバルな視点で東京にスポットを当て、東京が常に世界のトップランナー都市として、経済面や金融センター機能といった特定の側面だけでなく、環境にも配慮し居住者や訪問者にもやさしい世界の先進都市として成長してゆくための戦略立案や提言を行っています。