東京中心部における再開発の研究
発行日:1986年10月
言語:日本語
書籍版:1,100円(本体価格1,000円+税)
東京湾にひろがる埋立地を、首都圏の都市問題解決の有力な援軍として期待する動きが活発になってきている。
この報告書では、単なる物的都市空間を個別に組立てる前に、新しい文化圏・生活圏の形成が東京湾岸に展開されるのではないかという話題をまず提示している。 多摩丘陵に集積された中産階級の住宅地は相互に結びあって、多摩の文化圏が生み出されるであろうという期待と同様に、東京湾岸では、高度の能力を備えた基幹道路と鉄道を利用して、国際的な仕事に深くかかわる人々の生活がそこに定着するであろう。 更にそれに刺激されてこの地域を、新しく創られた良質の住宅市街地だと考える多くの人々が定住の根を下せば、湾岸地域に山ノ手文化圏・下町文化圏とはまた異る文化圏が形成されてもおかしくはない。
この文化圏の中心に、13号地を包含する東京都の埋立地群が位置づけられる。 この地区はここで"コスモ・トーキョー"と名づけられている。 コスモ・トーキョーの役割りは業務と流通機能だけではない。リクリェーションと文化教育が住居と一体となった市街地の形成を考えている。 そのためには海水面を流通とリクリェーションにできるだけ初めから区分しておくことが重要であるし、計画的に、衰退していく産業機能を新しい都市機能に更新してゆく枠組みを創っておくことも重要である。
更に強調したいことは、コスモ・トーキョーが順調に成長をとげるためには、充分な能力をもった道路・鉄道が、ここから都心や新宿副都心と結ばれること、通勤用の鉄道網がこれ迄の都心経由ではない形態で供給されることが必要だということである。この提案は東京湾岸地域を巨視的・生活文化的視点でまずまとめているが、まだその面でも検討されるべき課題を積残している。