東京中心部における再開発の研究
発行日:1989年12月
言語:日本語
書籍版:1,650円(本体価格1,500円+税)
東京の路面電車(後の都電)は明治36年からわずか数年の間に旧東京市(旧15区)を覆い尽くす路線網を形成し、60余年にわたって東京中心部で住み、働く人々の足であった。 しかし、現代の中心部の足である地下鉄は、かつての都電に比べれば駅間が長く、また、都心の一部を除けば路線網の目が粗く、未だ地下鉄の恩恵を受けず停滞気味の地区もある。
都営地下鉄12号線の環状部は、まさにそうした地区を貫き、そして都心部や副都心地区に直結する路線です。 地理的には都心・副都心に近く、かつ高度利用の余地が大きい地区において交通の便が向上するのですから、再開発のポテンシャルが上昇することは間違いありません。 12号線沿線の再開発の動きを、その地区にとっても、そして東京中心部全体にとっても役立つものに誘導することが緊急の課題になっていると考え、この研究を行った。
まず、良質な住宅を増やすという課題があります。都心・副都心に至近なこのゾーンで住宅を大幅に増やすことは、東京の中心部で働くものの時間的・肉体的負担を軽減し、地元の商店街も賑わうことになる。
次に、働く場として活性化するという課題が挙げられる。東京が将来にわたって生き生きとした都市でありつづけるためには、一極集中の弊害を除去しつつ、世界都市として先端的分野や中枢的機能を受け止めていく必要があり、このゾーンはそれらの活動を支援する事業所の立地に適している。 そして、こうした新しい機能を受け入れつつ地場産業を新しい時代に適応させていけば、活力ある環状ゾーンとなる。 憩える場を求めるニーズも格段に大きくなりつつある課題である。 このゾーンに比較的良く残されている江戸時代から昭和初期にかけての歴史的環境や、坂・緑・水といった自然環境を活用したり、商店街の個性を強く打ち出すことで、東京中心部の生活に潤いを与えることが一つのやり方だと思われる。
12号線環状部沿線ゾーンの皆様の街づくりへの取り組みにこのレポートが参考になれば幸いである。