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ICF 2016

ラップアップ・セッション

2016年10月20日
モデレーター / Facilitators
竹中 平蔵
モデレーター竹中 平蔵
東洋大学教授/慶應義塾 大学名誉教授
森記念財団都市戦略研究所所長/アカデミーヒルズ理事長
市川 宏雄
Facilitator市川 宏雄
明治大学公共政策大学院 ガバナンス研究科長・教授
森記念財団理事
足立 直樹
Facilitator足立 直樹
サステナブルビジネス・プロデューサー / 株式会社レスポンスアビリティ  代表取締役
大越 いづみ
Facilitator大越 いづみ
電通総研所長
小泉 耕二
Facilitator小泉 耕二
株式会社アールジーン 代表取締役 / IoT News代表

ラップアップ・セッション

竹中

ラップアップ・セッションでは、「Future Living」、「Future Work」、「Future Mobility」、「Future Entertainment」という4つの分科会でのブレインストーミングを通じて、未来の東京に関して「コンセンサスが得られたこと」や「引き続き議論が必要なこと」という観点で、各ファシリテーターより報告していただく。



Future Living

足立

20年後の東京における居住像を考える上で議論の前提となったことは、現在の我々の生活を規定している様々な制約から解放されるであろうということである。例えば、時間および空間的な制約から解放されることで、働く場所や時間が大きく変わり、それに伴って生活スタイルも変わってくる。さらには、テクノロジーの進化によって、日本人が抱えている言語に関する障壁が低くなり、また、価値観の変化によって働くことと遊ぶことの垣根もなくなってくるのではないか、ということであった。その上で、「その時、人間は何をするのだろうか」や「人間はそもそも何を求めているのだろうか」といったより根源的な議論も行った。そこで導き出されたことは、「20年後の人々の生活は、一つのあり方ではなく、様々な生き方の人が共存している時代であり、そのような多様性を社会全体として包摂するような枠組みを作り上げていく必要がある」ということであった。

働き方としても、これまでのように企業に所属する「個」という括りではなく、「個」が有する能力を、コミュニティや社会的プロジェクトなどに直接反映できるような時代になる。そして、技術が時間的・空間的な自由度を与えてくれる時代にもなると、必ずしも東京にいる必要性もなく、シンガポールやロンドンに住んでいても良いという事にもなる。あるいは1年の中でそれらの都市を自由に動くのでもいいのではないかと。それも「多様性」である。そのような時代において、東京が独自性を発揮していくためには、他の都市を模倣するのではなく、東京らしさを尖らせていき、多様な都市の中でユニークな東京を作り上げていくようなイノベーションが必要なのではないかと思う。



Future Work

大越

人工知能(AI)やロボットによって今の私たちの労働は代替されてしまうのかという問いに対しては、線形的(連続的)な仕事は代替され、非線形的(非連続的)なものは残っていくという結論であった。産業革命はブルーワーカーの労働に革命的な変化もたらしたが、今後はAIやロボットによってホワイトカラーの労働に変化が起こると考えている。また、雇用形態として、現在の正規雇用・非正規雇用という区分ではなくなり、フリーランスとはまた異なったより非正規型に近い新しい区分が現れるだろう。企業と個人との関係はより多様になるが、企業は無くならず、資本を持つ存在として残る。一方、個人については、よりエンパワーメントされてくる。先ほど、居住スタイルについては「多様性」といキーワードが出ていたが、労働に関していうと「希少性」というキーワードがあげられた。希少性は高い価値を生み出し、それに対して高い対価が支払われる。ただし、「希少性」の持つ意味は社会の変化とともに移り変わって行くので、その中で、より希少性が高いものが残っていくことになる。

さらに、より根源的な議論として「なぜ働くのか」ということも議論した。これまでは「金銭的な豊かさ」を求めるために働いてきたが、これからの時代は、より「共感の豊かさ」、すなわち労働に対して「ありがとう」と言われることが労働の根源をなしてくるのだと思う。長寿化時代の働き方として、多彩な選択肢を持たないと、今の労働の概念、市場の概念だけでは生きていくことはできないだろう。

ファシリテーター1

Future Mobility

小泉

自動運転車の開発に関しては、協調領域と競争領域を明確にする必要がある。地図や通信などの分野については、欧米の方が日本よりも企業間で協調しながら技術開発しているという現状がある。その自動運転車が、都市生活におよぼす変化として、まずは移動コストの大幅な低減がある。それによって、多くの人が電車からパーソナルモビリティに通勤手段をシフトすることも想定される。しかし、人の目的地がそれぞれ異なることと、車がネットワーク化され「移動」そのものがコントロールされることによって、交通渋滞が起こることはない。また、働き方が変わり、時差通勤なども増えてくるため、通勤ラッシュは緩和されていることが想像される。テクノロジーの進化によって移動しなくてもコミュニケーションが容易にできる時代になるが、人は必ず移動する。フェイス・トゥ・フェイスの対話も必ず行われる。但し、その必要性や重要性が薄まることと、自動運転車によって移動コストが低減することにより、企業や組織などが東京に一極集中している必要性は薄くなり、オフィスが地方に分散されていく可能性もある。また、現在はヒトの移動よりもモノの移動の方が多いとも言われている時代である。そのため、自動運転はロジスティクス分野においても大きく発展していくことになるだろう。



Future Entertainment

市川

現代の都市においては、多種多様なエンターテインメントが存在する。その中で、技術革新で形態が変わっていくと想定されるものに焦点を当てて議論した。最終的には、バーチャルな世界とリアルな世界との接点がどこまで近づくのかが1つのキーワード。どのように人々の気持ちを変えて、そして都市をどう変えるか。最大のテーマはライブである。但し、技術革新の時間軸と都市が変わる時間軸、そして人々の意識が変わる時間軸は、すべてが異なる。いまは、技術革新の時間軸が主導しているが、それが都市に変化をもたらすためには、仕組みや制度が大きな問題となる。一方で、人々の考え方の変化のスピードとどう組み合わせるか。多様なエンターテインメントが可能となる都市空間を作る話と、エンターテインメントで都市の中身をどのように変えていけるのかという対峙的な見方がある。



おわりに

竹中

インベンション(発明)とイノベーション(革新)は異なる概念。インベンションというのは技術的な可能性を顕在化させたものであるが、それが実際の生活に変化を及ぼした時、イノベーションになる。イノベーションを起こすためには、さまざまな分野で抱えている社会制度の壁のようなものを、どう乗り越えていくかということが課題である。日本は数多くの科学技術のインベンションを生み出しているが、それを社会で実際に活用し、定着させるプロセスのシステム構築が不十分である。そのような問題をどのように乗り越えていくかが今後の課題である。皆さんが東京の未来について考える上で、本日の議論が少しでも参考になったのであれば嬉しく思う。