Institute for Urban Strategies

> 都市戦略研究所とは

> English

ICF 2016

Future Mobility

2016年10月20日
Facilitator / Resource Persons
小泉 耕二
Facilitator小泉 耕二
株式会社アールジーン 代表取締役
IoT News代表
野辺 継雄
Resource Person野辺 継雄
インテル 事業開発・政策推進ダイレクター
チーフ・アドバンストサービス・アーキテクト
名古屋大学 客員准教授
金谷 元気
Resource Person金谷 元気
akippa株式会社 代表取締役社長
谷口 恒
Resource Person谷口 恒
株式会社ZMP 代表取締役社長

Future Mobility
人はなぜ、どのように移動するのか?~テクノロジーが変革する移動の意味をデザインする~



モビリティとの関わり

小泉

Future Mobilityのセッションでは、自動運転やシェアリングエコノミーというテーマで議論を行うが、まずは、それらのテーマと各登壇者との関わりを教えていただきたい。

野辺

自動運転は車に搭載されたコンピューターがサーバーと連携しながらアルゴリズムをつくり、開発されている。インテルは、そのコンピューティングパワーを供給している。

谷口

自動運転というのは技術の話だが、最終的にユーザーが利用するためにはサービスが重要。そこで、ZMPはロボットタクシーという会社を設立し、人を乗せる旅客サービスに関する実証実験を行っている。

金谷

akippaは、空いている月極駐車場や、使われていない個人宅の駐車場を、コストをかけずにコインパーキングにするというサービスを行っている。コストをゼロにするために、精算機を排除して、スマートフォンで予約と決済ができるようにしている。

ファシリテーター1

競争領域と協調領域

小泉

欧米と日本で自動運転の開発競争が行われているが、技術的な差異はあるか。

野辺

総合的にいうと日本の方が若干遅れている。

谷口

20年くらいの時間軸で考えると、最終的には技術よりもサービスとして広がるかどうかが重要。その際、一番大きいのは規制の問題。規制の少ない国では、新しい技術をいち早く導入するため、サービスのイノベーションが起こりやすい。

金谷

対して、駐車場については規制がほとんどないため、逆にやりやすいといえる。

自動運転車と駐車場との関係

小泉

自動運転車が普及すると、駐車場に対するニーズは減るのだろうか。

金谷

レベル4まで行くとかなり脅威。プラットフォーマーとしてやっている以上、駐車場を充電スポットとして使うなど、駐車場のカスタマイズをしていく必要がある。

>小泉

自動運転におけるレベルとは何か。

野辺

レベル1と2は、人間の運転操作の一部もしくは複数を自動化する段階。レベル3や4は、コンピューターが安全確認をして走行する。ここからが自動運転。レベル3は、状況に応じて人間が運転するが、レベル4は人間が全く運転に介在しない完全自動化。


自動運転車の安全性とサービス内容

小泉

自動運転車の安全性は信頼できるのだろうか。

谷口

人間はいろいろなスキルの人がいろいろな感情を持って走っているため、自分が注意していても事故が起きる可能性もある。コンピューターの場合は、そういうことは起きない。

野辺

人工知能のディープラーニングによるアルゴリズムにもとづく自動運転のほうがむしろ人の運転よりも安全性が高まる可能性が指摘されている。また、1つの車が学習したデータを、ほかの車にも共有するため、総体的にも安全性は常に向上する。

金谷

駐車場もそういうデータの中に入っている。akippaは、自動車メーカー等と組んで、車載ナビなどで予約できるシステムを検討しており、駐車場の確保ができている前提で移動することが可能となる。

会場

自動運転車が実現すると、例えば母親が、朝、子供を自動運転車に乗せて保育所に送り、会社から帰るときには、自動運転車に乗って子供が駅まで来て、一緒に帰るというようなことが可能なのか。可能な場合、朝、多くの車が保育所周辺に集中するのではないか。

谷口

子供を運ぶサービスはすでにタクシー会社が行っているが、費用が高い。自動運転になると、移動コストが下がるため、そういったサービスを享受しやすくなる。また、車載カメラで子どもの様子をモニタリングすることも可能。渋滞については、コンピューターで流量を制御するので起こらない。

野辺

車がいま自分はどこにいるかという情報を提供することによって情報がより正確になり、渋滞は緩和される。


他の交通機関への影響

会場

電車の利用者は減少するのだろうか。

ファシリテーター1

谷口

山手線のような近距離の電車や、路線バスのようなものは減少していくと思う。自動運転技術が進化すると、小さいユニットに移行していくと思う。一方、新幹線のような長距離の高速輸送手段というのは必ず残る。

小泉

山手線の利用者が1人ずつ個別の車に乗ってしまうと、いくら制御しているといっても渋滞は発生するのではないか。

谷口

電車は走る場所が決められているから集中する。自動運転車の場合は、レールが無数に増えるので、道が分散化され、混雑が緩和される。


自動運転車と走行速度

会場

高速で走行しても事故が起こらないのであれば、速度に関する考え方も変わるのではないか。一方で、道路や建物は、従来のモビリティのあり方を前提に計画されているように思う。将来的に必要な都市空間とはどういうものなのか。

金谷

空間という観点で言うと、バレットパーキングを普及させたい。そうすることで、駐車場のスペースは減少する。

谷口

制限速度については、経済原理にもとづいて決めるべき。急いでいる人は料金を払えば、早く走ることができ、コストを抑えたい人はゆっくり走行する。

野辺

速度については、安全走行に関する情報が、道路ごとに蓄積されてくるので、実際に走っている車をベースに現実に即した法定速度が決まってくるということも考えられる。

会場

自動運転車の動力源はどうなるのか。

野辺

コンピューターが運転する場合、内燃機関よりもEVの方が制御し易い。地球環境という観点からも、EVにシフトして行くと思う。


移動の仕方と働き方

小泉

移動の仕方が変わると、働き方も変わるのだろうか。

野辺

通勤時間帯に鉄道が混雑するという状況は、多くの無駄を生じている。今後は、どこで仕事をしてもかまわないというような社会になり、それに合わせたモビリティが出てくると思う。企業側も労働時間を変えるなど、社会構造も一体的に変革していく必要がある。オフィスがあって、そこに人が集まるというのは重要だが、一方で、インターネットを介した会議で、フェイス・トゥ・フェイスと同じような環境を作り出すことも可能になっている。働き方と移動の仕方は相互に影響を及ぼし合いながら変化していくと思う。


物流と自動運転

会場

ものの移動はどのようになるのだろうか。

谷口

人手不足と相まって、ものの輸送が一番大きな問題。マンションの場合は、人が1軒1軒訪れているが、それを小さいロボットで輸送するなど、ものの輸送に自動運転が活用されようとしている。

金谷

バレットの需要が一番あるのが、配送の車。違法駐車の問題があるため、昔は二人組で運行していたが、人件費がかかる。自動運転はその問題を解消する可能性がある。


自動運転社会への移行

会場

社会全体として、レベル3から4への移行はどのように起こっていくのか。

谷口

いつ実現したいかによる。20年後に実現したいのであれば共存もあり得ると思うが、渋谷の交差点のような場所を自動運転で安全に走行させるとなると、もう少し時間がかかる。

野辺

自動運転の実現性は走行速度にも依存する。郊外で、駅からのラストワンマイルを時速40km程度以下で走行するのであれば、ドライバレスという形のスマートトランスポーテーションは実現しやすい。

金谷

駐車場について言うと、たとえばスタジアムから徒歩1分の駐車場は、徒歩5分のところより若干高くてもすぐに埋まる。自動運転車をスタジアム周辺の駐車場にプールし、ラストワンマイルを送迎するというシステムを実現したい。

会場

今後、どのような方向性で技術開発が進められていくのか。

野辺

遠くまで人を運ぶことと、近隣で人を動かすというのは違う概念。高速道路だけでも自動運転化しようというのが前者。高齢者のライフラインや通勤のラストワンマイルなどを実現しようとするのが後者。当面は、両方から別々に進んでいって、技術的な面も含めて徐々に融合していくことになるだろう。