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訪日外国人の都市間動態分析
~モバイル空間統計®を活用したデータ分析~

背景と目的

日本の総人口は2008年をピークに減少を始めており、今後もさらなる人口減少が見込まれています。一方で、訪日外国人(世界交流人口)は増加の一途を辿り、今後も大幅に増加すると予測されています。そのような状況の下、日本の各都道府県における主要都市が活力を維持し続けるための一つの鍵は、拡大が確実視されている世界交流人口を取り込み、それらの都市間でダイナミックな対流を起こすことです。そこで、当調査では、今後の各都市の観光戦略立案に資することを目的として、JPC対象都市を起点とした時の訪日外国人の都市間動態の現状を可視化することで、主に観光という視点での各都市の可能性や課題を明らかにしました。

調査分析手法

訪日外国人の都市間動態分析を行うにあたっては、株式会社ドコモ・インサイトマーケティングが提供している「モバイル空間統計®」を活用しました。モバイル空間統計とは、株式会社NTTドコモの携帯電話ネットワークのしくみを使用して作成される統計情報であり、1時間ごとのおおまかな人口の位置情報を、24時間365日把握しているデータです。今回の調査では、訪日外国人に関する「分布統計」と「動態統計」のそれぞれの空間統計データを用いて、訪日外国人の「滞在都市分析」および「訪問都市分析」、「都市間動態分析」の3つの分析を試みました。

分析1:滞在都市分析

対象期間内に、対象22都市に滞在した訪日外国人数(実人数)を市単位で集計しました。当分析によって、対象都市における年間の訪日外国人数の総数を明らかにするとともに、相対的な規模の違いを明らかにしました。ここで、対象者が10:00~17:59に2時間以上、同一都市に留まった場合は「滞在」としてカウントしています。

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分析2:訪問都市分析

対象期間内に、対象22都市(「滞在都市」という)に滞在した外国人訪問客が、同一旅程中に訪問した他の都市(「訪問都市」という)を市単位で集計(実人数)しました。訪問都市は日本の全市区町村を集計対象としています。当分析を通じて、滞在した都市からみた時に、つながりの強い地域や都市を明らかにしています。ここで、対象者が時間帯に関わらず2時間以上、同一都市に留まった場合は「訪問都市」としてカウントしています。

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分析3:都市間動態分析

対象22都市間の訪日外国人数(実人数)をクロス集計することで、22都市間のつながりの強さを明らかにしました。さらに、つながりの強さをレベル別に表現することで、つながりの強さに応じた都市群を明らかにしています。

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分析データの仕様

データ種別 株式会社ドコモ・インサイトマーケティング「モバイル空間統計®」
運用データ数 訪日外国人約900万台(2018年実績) (法務省「出入国管理統計」で公表される国籍別入国外国人数を元に拡大推計処理を実施)
対象期間 2018年1月~12月の一年間
エリア粒度 東京23区は1 都市として集計し、その他の都市は市単位で集計する。
対象22都市 東京(23区)、大阪市、京都市、福岡市、札幌市、那覇市、横浜市、名古屋市、神戸市、奈良市、広島市、川崎市、千葉市、函館市、北九州市、金沢市、鹿児島市、熊本市、長崎市、姫路市、仙台市、高松市
(訪日外国人の多い順に記載)
対象都市抽出方法 1)日本の都市特性評価(JPC)2019の、対象72都市に東京(23区)を加えた73都市から、訪日外国人の年間延べ滞在日数上位20都市を抽出。

2)JPCで定義している10の地域を網羅するため、東北・四国エリアにおいて年間の訪日外国人人数が最も多い仙台市と高松市を 1)に追加した。

日本の都市特性評価 Japan Power Cities 2019