「Global Power City Index」は、地球規模で展開される都市間競争下において、より魅力的でクリエイティブな人々や企業を世界中から惹きつける力こそが「都市の総合力」であるとの観点に立ち、世界の主要都市について森記念財団独自の調査を行い、総合力を評価し順位付けするものです。都市の総合力をランキングする調査としては日本初の取り組みとなっています。また、既存のランキングのほとんどが、特定分野もしくは国別のランキングであるのに対し、都市のチカラを表す様々な分野を対象として都市の総合力を評価したランキングとなっています。
調査方法として、世界を代表する主要35都市を選定し、都市の力を表す主要な6分野(「経済」「研究・開発」「文化・交流」「居住」「環境」「交通アクセス」)における69の指標に基づいて評価を行います。さらに現代の都市活動を牽引する4つのグローバルアクター(「経営者」「研究者」「アーティスト」「観光客」)ならびに都市の「生活者」を加えた合計5つのアクターに基づき、これらのアクターのニーズと都市の指標を重ねたマトリックスから複眼的にアクター別の都市の魅力を評価します。このように都市を分野ごとに客観的に評価しながら、アクターという都市の利用者の視点に基づく評価を同時に行っている面で世界的にもユニークな調査・研究となっています。
調査・研究の推進にあたり、都市評価に関する世界的権威であるピーターホール卿をはじめとする学識者や各界の識者等が参画し、さらに第三者のピアレビュー(専門家による評価)を受け、ランキングに客観性を保つようにしています。
分野別総合ランキングのトップ3はニューヨーク、ロンドン、パリの順で、東京は第4位となり昨年と同様の結果となりました。
シンガポールが5位にランクされましたが、上位4都市との差は大きく、ニューヨーク、ロンドン、パリ、東京のトップ4都市としての存在感が大きくなりました。
ニューヨークとロンドンが「居住」と「環境」以外の分野で非常に高い評価を得ている一方で、パリは「居住」と「交通・アクセス」でトップを制しながらその他の分野でも比較的高い位置に付けています。
東京は「経済(2位)」、「環境(4位)」にランクされています。経済と環境が双方とも5位以内にランクされる都市は他になく、東京は世界に比類ない経済と環境の双方を両立する唯一の都市であることが明らかとなりました。GPCI−2009では、「環境」を新たな分野として独立させたことによって、東京の強みが改めて認識される結果となりました。
分野別の総合ランクのトップ4都市は、都市において活躍する4つのグローバルアクター、都市生活者、いずれのアクターからみても評価が高く、魅力的な都市であるといえますが、東京は「経営者」「観光客」からみた評価がやや低くなっています。
一方で、分野別の総合ランクで中位・下位である、「上海」、「北京」、「香港」などアジアの諸都市が、アクターによっては高い評価を得ています。また、分野別総合ランキングで中位圏の欧州の諸都市は、特に「アーティスト」と「生活者」からの評価が高くなっています。
分野別スコアの偏差値でトップ4都市を比較してみると、ニューヨークは「環境」が、ロンドンは「居住」といった弱い分野があるものの、その弱点をカバーして余りあるほど他の分野での評価が圧倒的に高くなっています。パリ、東京は、6分野すべてで平均より高い評価を得ていますが、「文化・交流」および「交通・アクセス」分野で、パリの評価が東京より高いことから、パリに次ぐ4位となりました。
また、東京は「経済」および「研究・開発」分野で非常に大きな強みを出しており、さらにトップ4都市のなかで、「環境」分野での評価が最も高くなっています。ただし、「居住」および「交通アクセス」の分野では、35都市中、平均程度の評価となっています。
GPCIの最大の特徴はランキングのプロセスにおいてそれぞれの都市のもつ強みや弱みが把握できることです。
東京の場合、その強みは、経済分野では世界のトップ企業が集積していること、研究・開発分野では研究者数の多さや研究開発費が豊富であることなどです。一方、東京の弱みは、都心から国際空港までのアクセスが悪いこと、高い法人税率などであり、これらの点で大きく劣っていることが、総合ランキングでトップ3入りできない原因であると言えます。
まず、最初に都市における6つの主要分野について評価を行うための要素について検討します。
次にそれぞれの要素に基づいて具体的な数値としての評価を出すための指標を設定します。指標は世界において公表されている統計、アンケート調査や現地調査を含む森記念財団が独自に行った調査に基づく合計69の指標から成っています。
そして、69の指標を都市別に指数化したうえで、それぞれの分野のなかで指標グループに分配してグループ毎のスコアを算出します。
最終的にそれぞれの指標グループに基づくスコアを分野ごとに集計して分野別スコアを算出し、それらを合計したものが総合スコアになります。
まず、最初に都市におけるそれぞれのアクターについてのイメージ像を描きます。
経営者
ビジネスマン
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研究者
研究者
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アーティスト
アーティスト
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観光客
観光旅行者
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生活者
都市住民
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次にそれぞれのアクターが都市を選択するにあたって直面する課題を抽出します。
経営者
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研究者
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アーティスト
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観光客
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生活者
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それぞれの課題に応じてアクター別に都市の評価基準を設定してゆきます。
経営者
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研究者
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アーティスト
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観光客
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生活者
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次に評価基準に対応する評価指標を都市のそれぞれの機能を評価する69の指標にあてはめて選択します。
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最終的にアクターごとの指標にもとづくスコアを集計して、アクター別のスコアを算出します。
都市の総合力を評価する上で重要な点は、単に都市ごとの指標の優劣だけでなく、これら大都市が相互にどのような関係−依存、競合、補完、を持っているかです。そのため、都市間相互の関係を表す以下のネットワークについての分析を行い、都市別の指標を積み上げただけでは分からない「グローバル・サーキット」を顕在化させるための分析を今年度よりランキングと並行して行っています。
金融業では依然として東京、ニューヨーク、ロンドンが強いネットワークを示しており、世界3大金融センターであることを表しています。また、パリはヨーロッパ及びアジアの諸都市とのリンクがロンドンを上回って非常に多く、ロンドンの陰に隠された金融センターであることが、この分析から明らかになりました。
【お問い合わせ先】
財団法人 森記念財団 都市戦略研究所
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